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3. 気相中の孤立分子系を対象とした電子振動波束のコヒーレント制御

気相中のヨウ素分子は振動のエネルギー準位間隔が小さいため、100フェムト秒程度の時間幅を持ったレーザーで容易に振動波束を作成することができる。 前節で説明したようなフェムト秒ポンプ・コントロールパルス対でヨウ素分子の電子励起状態に二つの波束を作成すると、それらは互いに干渉して最終的な状態を作ります。実際にどのような状態が できているのかを確認するためには、別のレーザーパルス(プローブパルス)を入射して分子の状態を読み出す必要があります。 このような実験をポンププローブ法と呼び、超短時間に対象とする系で起きる現象を観測する最も基本的な方法です。

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図3-1 ヨウ素分子を用いた波束干渉実験

左に示した図3-1が、こうした実験の概略図となります。ポンプ・コントロール対で作成した波束は遅延時間経過後にプローブ光の照射によってさらにエネルギーの高い電子状態に励起されます。 その後、この電子状態から放出される蛍光を光電子増倍管で観測することによって、波束の状態について情報を得ることができます。 我々の研究ではプローブパルスの時間幅によって2つの異なる実験を行った。一つ目はナノ秒プローブパルスを用いたポピュレーション分布の読み出し、二つ目はフェムト秒プローブパルスを用いた 波束運動の可視化と言うことができる。それぞれについて以下に紹介する。

3-1. ナノ秒プローブパルスを用いたポピュレーション分布の読み出し