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Research topics 

Here I will introduce the quantum coherent control, which is the main topic of my research. The introductory knowledge of quantum mechanics is assumed. If you have any questions or plan to visit us, send an e-mail to                                 .

                                        

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1. Young's Double Slit Experiment

Interference is the direct consequence of superposing waves. The most famous experiment demonstrating this characteristics is Young's double slit experiment. Fig. 1 shows the scheme of Young's double slit experiment.

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Fig.1 Young's double slit experiment

Due to the different optical path length between a-b-d path and a-c-d path in Fig. 1, the overlapped light waves interfere with each other at point d. If the phase shift is expressed as (2n+1)π, the two light waves are totally out of phase, so that destructive overlap occurs. On the other hand, if the phase shift is expressed as 2nπ, two waves are constructively overlapped to give bright area on the screen. The wavefunction which describes the quantum state of particles is also a kind of wave, so that we can observe the constructive and destructive overlaps. Such phenomena is called "quantum interference" compared to the normal interference of classical waves.

2. What is Coherent Control?

 Coherent control is a technique to manipulate the quantum wavefunction of atoms and molecules utilizing the coherent light sources. Through the light-matter interaction, the coherent characteristics of the light is imprinted on the wavefunctions of the target quantum system. The characteristics of the light, such as the temporal envelope and the spectrum, can be designed easily using the apparatus such as spatial light modulator and the Michelson interferometer. With such pulses, interference of wavefunctions can be manipulated so that the amplitude and phase distribution of the wavefunction can be controlled from outside.
In our research, the wavefunction of the target quantum system is manipulated by femtosecond ultrashort laser pulses. Our final goal is to control the macroscopic characteristics of the target system by the coherent control techniques. Coherent control can be applied for the photo-reaction branching ratio control, and is also an important building block to manipulate the qubit states which is indispensable for quantum computing and quantum information technology. 

​The most important characteristics necessary for the coherent control is the "long coherence life time." The photo-excited quantum state loses its quantum nature during the temporal evolution, due to the irreversible relaxation process called pure dephasing. Coherent control is effective only when the target system keeps the clear definition of the phase. If the phase is unclear, the interference doesn't bear any contrast.

 
 For coherent control, we need a highly coherent light sources, i.e. lasers. In our group, we use femtosecond ultrashort laser pulses to perform coherent control. Femtosecond laser pulses have broad spectral bandwidth, so that it is also convenient to produce a wave packet, which is a linear combination of quantum eigenfunctions. For example, the vibrational wave packet generated in the electronic excited state is described as follows,  

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where Φ0gis a vibrational eigenfunction with v=0 in the ground state. Φne is the v=n state vibrational eigenfunction in the electronic excited state, ωeg is the transition angular frequency between the electronic ground and excited states, ωis the vibrational angular frequency, ais the amplitude of v=n state, and |g> and |e> are the bra-ket notation of the electronic wave functions. Depend on the target quantum states, wave packet (WP) is called vibrational WP, electronic WP, rotational WP, etc.

In the following, I will mainly focus on the motion of vibrational WPs. What is shown below is the WP motion (probability distribution) in a 1D harmonic potential, where x-axis represents the internuclear distance. As you see, the motion of the packet is periodic, which is defined as classical vibrational period (Tvib). In realistic molecular potential, the potential is anharmonic so that the packet shows collapse and revival structure as temporal evolution.

Wave packet motion in a harmonic potential

Next, we consider the situation where a pair of time-delayed femtosecond(fs) laser pulses is shined on the molecule with delay τ. Assuming that the laser pulse intensity is not so strong so that the depletion of the ground state population is negligible, the WP is described as,

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​.

Squaring this equation gives the population distribution as

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​.

が得られる。この式で重要な点は、励起状態の各振動準位のポピュレーションがτの関数として、角振動数ωnで振動しているということです。 実際にヨウ素分子の実験を行った場合の条件で考えると、ヨウ素の電子振動励起はおよそ530nmの光で行っています。これからポピュレーションの振動周期を計算すると、 1.8×10   sとなり、非常に短い時間周期でポピュレーションが振動していることがわかります。この結果から、高い精度で各固有状態の ポピュレーション分布を制御するためには、非常に高い安定度でτを制御する必要があることがわかります。 実際に、二つの波束の重ね合わせの結果が最も強くなる場合と弱くなる場合について、シミュレートした結果を次に示します。

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図2 (a) 波束の強め合い

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図2 (b) 波束の弱め合い

図中の矢印のタイミングがレーザー光が照射されるタイミングに相当します。以下では、一発目の励起パルスをポンプパルス、二発目の励起パルスをコントロールパルスと 呼びます。 左側の強め合いの場合にはτ=499.7fs、右側の弱め合いの場合にはτ=498.8fsとなっています。 たった0.9fsだけ、照射パルスのタイミングを変えることで、最終的に生成される波束の状態が劇的に変化していることがこの結果からわかります。 理想的な状態では、波を重ね合わせることで最終状態のポピュレーションは単パルス励起のときのポピュレーションの0から4倍までの間で振動することになります。

私の研究では、様々な量子系を対象としてその量子状態を制御することを研究しています。当然ですが、単純な系で量子状態の位相寿命が長いほど コヒーレント制御は容易に行えますが、起こる現象もある意味想定通りの現象でしかありません。図3に示すように、気相中の孤立分子からスタートして、現在はより複雑な固体系を対象としてその量子的な状態の制御に挑戦しています。 以下ではそれぞれの量子系におけるコヒーレント制御実験について紹介します。

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3. Coherent Control of Vibronic Wave Packets in Gas Phase Molecules

図3 コヒーレント制御の対象とする量子系

3. 気相中の孤立分子系を対象とした電子振動波束のコヒーレント制御

気相中のヨウ素分子は振動のエネルギー準位間隔が小さいため、100フェムト秒程度の時間幅を持ったレーザーで容易に振動波束を作成することができる。 前節で説明したようなフェムト秒ポンプ・コントロールパルス対でヨウ素分子の電子励起状態に二つの波束を作成すると、それらは互いに干渉して最終的な状態を作ります。実際にどのような状態が できているのかを確認するためには、別のレーザーパルス(プローブパルス)を入射して分子の状態を読み出す必要があります。 このような実験をポンププローブ法と呼び、超短時間に対象とする系で起きる現象を観測する最も基本的な方法です。

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図4 ヨウ素分子を用いた波束干渉実験

左に示した図4が、こうした実験の概略図となります。ポンプ・コントロール対で作成した波束は遅延時間経過後にプローブ光の照射によってさらにエネルギーの高い電子状態に励起されます。 その後、この電子状態から放出される蛍光を光電子増倍管で観測することによって、波束の状態について情報を得ることができます。 我々の研究ではプローブパルスの時間幅によって2つの異なる実験を行った。一つ目はナノ秒プローブパルスを用いたポピュレーション分布の読み出し、二つ目はフェムト秒プローブパルスを用いた 波束運動の可視化と言うことができる。それぞれについて以下に紹介する。

3-1. ナノ秒プローブパルスを用いたポピュレーション分布の読み出し

プローブパルスとしてナノ秒のレーザーを用いた場合、パルスのスペクトル幅はヨウ素分子の異なる電子振動遷移間のエネルギーさと比較してはるかに小さくなる。この場合、ナノ秒レーザーの 波長が特定の遷移と共鳴した時にのみ、その始準位からの遷移が起きることになるため、波束を構成している個々の固有準位からの遷移を状態選別しながら観測することができます。 下図に示したデータは、ヨウ素分子のB電子状態中の振動量子数v=33準位のポピュレーションの変化をポンプ・コントロールパルス間の遅延時間τの関数としてプロットしたデータです。 この実験では、ポンプ・コントロールパルス間の遅延時間を500フェムト秒(~1.0Tvib)周辺で±2fs程度スキャンしています。その結果、得られたシグナル強度は0から1の間で振動していることがわかります。 振動の周期はおよそ1.8fsであり、これは電子基底状態のv=0準位からB電子状態のv=33準位への遷移エネルギーに対応しています。

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プローブパルスの波長を掃引することによって、波束に含まれるすべての振動固有状態のポピュレーションとそれらの状態の相対位相を可視化することができます。本手法の応用として、分子の振動固有状態を用いた離散フーリエ変換の 実装という研究や、強電場パルスを用いてポテンシャルを歪ませることによって準位間の相対位相をずらす研究なども行っています。

図5 ヨウ素分子のRamseyフリンジ計測

3-2. フェムト秒プローブパルスを用いた波束運動の可視化

一方、プローブパルスとしてフェムト秒のレーザーを用いた場合、波長で決定される特定の原子間距離周辺の波束密度の確率密度をプローブすることができます。さらにプローブの波長を掃引することにより、 時空間的な波束密度分布を目に見える形でプロットすることが可能になります。(厳密には遷移確率やスペクトル強度のファクターが入るので、分子の中の波束そのものの形を見ている訳ではない。) ポンプ・コントロールパルス間の時間間隔を1.5Tvib周辺で、90°ずつ位相が変化するようなタイミングに設定した場合に観測された波束の時空間密度分布のプロットを以下に示します。 この測定で観測できている空間範囲はおよそ6pmと非常に狭い範囲ではありますが、波束の時空間密度分布の様子が二つの波束間の相対位相の変化とともに大きく変化している様子が観測されています。 例えば、0°と180°を比較すると0°では334pmあたりで密度が山になっていたのが180°では逆に谷となっていて、密度の山と谷の位置が逆転していることがわかります。

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図6 ヨウ素分子の量子カーペット計測

3-3. 強電場パルスを用いた量子干渉制御

​現在執筆中

こちらで紹介した気相中でのコヒーレント制御の研究は現在NAISTでは行っておりません。 実験内容について詳細を知りたい方は、以下の文献を参考にして下さい。

【関連論文】

  1. Visualizing picometric quantum ripples of ultrafast wave-packet interference
    H. Katsuki, H. Chiba, B. Girard, C. Meier, and K. Ohmori, Science 311, 1589-1592 (2006).

  2. Real-time observation of phase-controlled molecular wave-packet interference
    K. Ohmori, H. Katsuki, H. Chiba, M. Honda, Y. Hagihara, K. Fujiwara, Y. Sato, and K. Ueda, Phys. Rev. Lett. 96, 093002 (2006).

  3. READ and WRITE Amplitude and Phase Information by Using High-Precision Molecular Wave-Packet Interferometry
    H. Katsuki, K. Hosaka, H. Chiba, and K. Ohmori, Phys. Rev. A 76, 013403 (2007).

  4. Actively tailored spatiotemporal images of quantum interference on the picometer and femtosecond scales
    H. Katsuki, H. Chiba, C. Meier, B. Girard, and K. Ohmori, Phys. Rev. Lett. 102, 103602 (2009).

  5. Ultrafast Fourier transform with a femtosecond laser driven molecule
    K. Hosaka, H. Shimada, H. Chiba, H. Katsuki, Y. Teranishi, Y. Ohtsuki, and K. Ohmori, Phys. Rev. Lett. 104, 180501 (2010).

  6. Strong-Laser-Induced Quantum Interference
    H. Goto, H. Katsuki, H. Ibrahim, H. Chiba, and K. Ohmori, Nature Phys. 7, 383-385 (2011).

4. Cohntrol of Ro-vibrational Motion in Solid Para-Hydrogen

4. 固体パラ水素中での振動回転状態制御

4-1. 非線形分光法を利用したコヒーレント状態の振幅制御

気相中の孤立分子よりも複雑な系として、次に固体パラ水素中での振動励起子制御について紹介する。水素分子はその核スピンの対称性からパラ水素とオルト水素に分類される。 パウリの排他則の結果、パラ(オルト)水素は回転量子数Jが偶数(奇数)しか取ることができない。結果的に、極低温で作成したパラ水素結晶中の水素分子はほぼすべてJ=0状態に 存在していると考えられる。J=0状態の固有関数は等方的な分布を持っていることから、固体パラ水素では各分子が特定の軸方向を持っているのではなく、等方的な分布を持った球体のように 扱うことができ、希ガス結晶のようなイメージでとらえることが妥当である。(下図参照)さらに、電気的な多極子モーメントが存在しないことから、分子間の静電的な相互作用も非常に弱い。特に v=1←0の純粋振動遷移を考えると、分子の球対称性も維持されるために振動励起状態のコヒーレンス寿命が非常に長いという特徴を持つ。不純物濃度にもよるが、1ns程度のコヒーレンス 寿命を容易に得ることができる。

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図7 パラ水素結晶の特徴

パラ水素結晶は多粒子系であるため、その波動関数は非常に多自由度の複雑なものとなる。個々の分子基底から出発すると、分子iがv=1に励起していてその他の分子がすべて基底状態 にあるような状態は 

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と表される。この状態を基底として、分子間相互作用を対角化することによって、非局在化した振動固有関数が得られ、次のように波数ベクトルkによってラベル付けされる。 

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このような系を対象に、その振動励起状態の波束の重ね合わせによる波束干渉制御を行った。 実験のスキームを下図で紹介する。水素分子の電子遷移は可視領域には存在せず、振動遷移も赤外活性ではないため直接吸収遷移は利用できない。そこで、インパルシブラマン遷移を利用して、 二色のレーザーの差周波を水素分子の振動遷移エネルギーに共鳴させることで、v=1←0遷移を誘起する手法をとった。実験では600nmのポンプパルスと800nmのストークスパルスを重ねることにより 振動遷移を引き起こしている。ヨウ素の場合と同様、遅延時間τ経過後に同じポンプ・ストークスパルス対を入射することで、二つの波束を重ね合わせることができる。 生成される状態は 

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のように表される。3節で紹介したヨウ素分子の場合と同様、励起パルス間の遅延時間τを変化させることによって、振動励起状態の振幅が変動していくことがわかる。 生成した波束の状態は遅延時間経過後にプローブパルスを入射して、そのパルスが散乱されて生じるアンチストークスパルスを観測することで行う。ポンプ・ストークスパルスで作成した コヒーレンスの状態をプローブパルスで観測するという手法はCARS(coherent anti-Stokes Raman scattering)の手法と全く同じである。 一連の実験のスキームを図示すると図8のようになる。

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図8 パラ水素実験のスキーム

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図9 パラ水素量子干渉フリンジ

振動波束の励起はインパルシブに起きるので、ポンプパルスとストークスパルスは時間的に重なっていることが必要である。 プローブパルスのタイミング(τprobe)を最初の励起パルスから1ns後ろのタイミングに固定しておいて、二回のラマン励起の間のタイミング(τIRE) を変化させた場合、2節で見た強め合いと弱め合いが交互に起きる様子が図9のように観測される。振動の周期はv=1とv=0状態のエネルギーの差からおよそ8fsと見積もられる。 
実際に測定して得られたシグナルを下図に示す。二回の励起を重ねることで、相対強度は0から4の間で変動しており、非常に高い精度で波束の重ね合わせが制御できていることがわかる。また、固体中でのコヒーレンスの保持時間も非常に長く、500ps経過後においても 劣化の度合いは10%程度に抑えられていることがわかる。

4-2. 二次元位相変調器を用いた空間位相分布の制御

4-1の結果を元に、ポンプ・ストークスパルスの空間波面を二次元位相変調器によって制御することで、時間的な制御と空間的な干渉制御を同時に行い、 その結果をアンチストークスパルスの空間分布イメージとして読み出す手法を確立した。この結果、空間位相変調器を用いて自在な波面分布を作成して、 パラ水素結晶中に書き込むことで任意の位相分布が実現できる。デモンストレーションとして2x2のドットパターンを固体パラ水素中に書き込む実験を行った。 マスクのデザインにより、個々の4つのスポットに対し、任意の位相分布を書き込むことができる。 実際に4つのスポットに(0,0,0,0),(0,180,0,180),(0,270,180,90)という3つの位相情報を書き込み、その状態を読み出した結果を図10に示す。 それぞれのスポットの強度が異なる位相で振動していることがわかり、空間的な位相分布の書き込みと読み出しに成功している。

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図10 空間位相分布の書き込み/読み出し実験

このような位相分布の観測を応用すれば、外部からの摂動による位相のずれや、固体中の不均一環境に由来する振動周期の違いなどを読み出すことも可能となる。


【関連論文】

  1. Optically engineered quantum interference of delocalized wavefunctions in a bulk solid: The example of solid para-hydrogen
    H. Katsuki, Y. Kayanuma, and K. Ohmori, Phys. Rev. B 88, 014507 (2013).

  2. Manipulation and visualization of two-dimensional phase distribution of vibrational wavefunctions in solid para-hydrogen crystal
    H. Katsuki, K. Ohmori, T. Horie, H. Yanagi, and K. Ohmori, Phys. Rev. B, 92, 094511 (2015). 

  3. Simultaneous manipulation and observation of multiple ro-vibrational eigenstates in solid para-hydrogen
    H. Katsuki and K. Ohmori, J. Chem. Phys. 145, 124316 (2016).

5. Cavity Exciton Polaritons
6. Amplitude Manipulation of Coherent Phonon Motion

5. 励起子ポラリトンのコヒーレント制御

固体中の励起子と光の粒子であるフォトンが混ざり合ってできる準粒子を励起子ポラリトンと呼ぶ。その成り立ちから、この粒子は光と物質の特徴を併せ持った、興味深い研究対象である。 現在、無機量子ドットと光を微小キャビティ中に閉じ込めて結合させた系において、ポラリトン凝縮と呼ばれるボーズアインシュタイン凝縮と似ているが少し異なった興味深い現象が 観測されている。ポラリトン凝縮状態は量子的な状態であり、その状態からの発光は必然的にコヒーレントな光となるため、低しきい値でのレーザー発振(ポラリトンレーザー)が報告されており、今後の応用へ向けて研究が進んでいる。また、有機分子の励起子とフォトン からなる励起子ポラリトンも最近報告がなされ、新たな応用分野が広がりつつある。有機分子を利用したポラリトンは室温かつテーブルトップにてポラリトン凝縮という量子的な集団を実現できるため、今後の応用を考えた場合、非常に魅力的である。 
コヒーレント制御の観点から見た場合、励起子ポラリトンは非常に興味深い系である。その理由として、まず一つ目に有効質量が非常に小さいために光子との運動量のやり取りがダイレクトに 操作、観察できる系であるということ、二つ目にポラリトン凝縮に関連した自発的なコヒーレンスの生成という現象と外部からの光によるコヒーレンスの生成という、 相反する二つの事象を扱える可能性がある点である。まだまだこれから始めるテーマなので長い時間がかかると思いますが、興味があればどうぞ。 

6. コヒーレントフォノン制御

固体結晶に対し、そのフォノン振動の周期よりも短い時間幅を持ったパルスレーザーを照射すると、結晶のフォノン運動を励起することができる。通常の熱で励起されるフォノンと異なり、 レーザー光が照射された領域内で原子(分子)の運動の位相が揃った状態で励起が行われるため、このようなフォノン振動をコヒーレントフォノンと呼ぶ。 コヒーレントフォノンを計測するには、pump-probe分光によって反射率の変化として計測することが一般的です。

6-1. ビスマス単結晶の二次元原子運動の制御と可視化

ビスマスの単位格子を図11に示す。z軸方向に振動するA1gモードとxy平面内で二重縮退したEgモードという二つのモードが存在している。 これらのモードの励起振幅を光によって制御することができれば、結晶格子中の原子の運動を制御できることに繋がる。実験では、図12のような光学系を用い、ポンプ光の照射による プローブ光の反射率変化を測定している。

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図11 ビスマスの単位格子とフォノンモード

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図12 コヒーレントフォノン光学系

励起パルスとしてチャープパルスを時間的に重ねた励起パルスを用い、両者の遅延時間を制御することでTHz領域の変調をスペクトルに与え、フォノンの振幅制御をおこなっている。 さらにab initio計算によって反射率の変化と原子の変位の間の比例定数を計算し、反射率の変化から光の照射された平面内における原子の変位を可視化することに成功した。 より詳細を知りたい方は、以下の文献を参考にして下さい。

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図13 フォノン振幅制御結果

6-2. ルブレン単結晶のTHzフォノン熱浴分布の制御

​現在執筆中

【関連論文】

  1. Optical manipulation of coherent phonons in superconducting YBa2Cu3O7-δ thin films
    Y. Okano, H. Katsuki, Y. Nakagawa, H. Takahashi, K. G. Nakamura and K. Ohmori, Faraday Discussions 153, 375-382 (2011).

  2. All-Optical Control and Visualization of Ultrafast 2D Atomic Motions in a Single Crystal of Bismuth
    H. Katsuki, J. C. Delagnes, K. Hosaka, K. Ishioka, H. Chiba, E. S. Zijlstra, M. E. Garcia, H. Takahashi, K. Watanabe, M. Kitajima, Y. Matsumoto, K. G. Nakamura, and K. Ohmori, Nature Communications 4:2801 doi:10.1038/ncomms3801 (2013).

  3. Mode Selective Excitation of THz vibrations in Single Crystalline Rubrene 
    K. Yano, H. Katsuki, and H. Yanagi,
    J. Chem. Phys. 150, 054503 (2019).

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